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査定も本日で七日目。
折り返し地点を過ぎたという所だろう。 この館の主であるルビーとその補佐者であるサファイアは、二階にある訓練室の一角へと赴いていた。 今日は選手 しかしこの少数派こそが査定する側にとって非常に難しい。 この種別 それも具体的に合格線 ――占いとか奇術 検討の付かない少女は眉間に皺を寄せながら首を傾げるしかなかった。 占星術は星の動きを元に人の運勢や世界の動向を占うものである為、星の位置関係や輝き方を正確に読み取れるかどうかという、技術的側面が大きいらしい。 細かくその方法や所作についてルビーに講義されながら、トパーズは真剣な面持ちで査定を受けていた。 星の動きだけでなくどのような配置の時にどういう意味があるのか等、膨大な知識量が必要なのだ。 相も変わらず紅瞳の少年は何の書物も持たずに、星の配置図を指差しながら説明をしていた。 ――一体アイツの頭の中ばどうなっとうとね??どんだけ記憶力が良かと??―― 側で同じことを聞いてるはずなのに、言ってる意味の半分くらいしか理解出来ない。 もはや記憶力以前の問題なのだろう。 講義を受けている選手 小一時間程講義と実戦が行われて、次の選手 占いでもう一つ分類 こちらもそれぞれのカードの意味の把握をしている上で、展開法やカードの上下の向きによって意味合いが変化する為、記憶力と読み取り マゼンダという選手 先程以上に解説されている内容が分からず、ルビーの言葉を追うことに必死だ。 分かった事は、それぞれのカードにきちんとした意味があり、正位置と逆位置によってその意味合いが変化するという事だった。 また、占う内容によって並べる配置が異なるようで内容が変わる毎に目を凝らす他ない。 後日分かった事だが、シャッフルの方法やこの配置そのものも地域や流派があるようで、人によって異なるらしい。 恐らく彼に合った方法で指導しているのだろうと思うと、頭を痛めるしかなかった。 奇術 先程とは違い、知識量を問うものではなくその技術力を観る為、要は結果が良いか悪いかだからだ。 如何に"タネ"を見破られずに、何れだけ高い技を披露出来るか。 査定を受けているライムは、緊張した面持ちながらも何とかミスをすることなく全てを終えていた。 そしてお辞儀をし、演技が全て終わった後だ。 じっと観察していたルビーはスッと立ち上がり、奇術 ――…まさかとは思うけど、ルビーってこんなことまで出来るんやろうか。―― もはや此処まで来ると何が起こっても動じることはないが、にしても"こんな事まで"と思ってしまう。 こういった類いは知識云々ではなく、手先の器用さやどれだけ努力してきたか、その経過がものを言う。 持ちうる才能だけでは如何せん実力が伴わないとも思うのだが… ――何か、ルビーやったら見ただけである程度理解してやりそうとね…―― 淡々と解説しながら、時には実際にやって見せたりもしているその姿は、先日の肉弾戦をやってのけた姿とも、射撃で大激戦を繰り広げた姿とも違って見えた。 「まず根本的に手の動きが所々で鈍いんだよね。だからぎこちなさが残ってしまうし、見る人が見ればタネを見破られちゃうんだ。 …そうだ、サファイア。」 「……ふぇっ?!アタシとね!?」 「そうだよ、こっちに来て。さてと、ライム。初歩的なコイントスからお復習 ポケットの中から銀色の50ベリー硬貨――約500円相当――を取りだし、ライムに手渡す。 「コイントスでどちらかの手に硬貨を隠す。それを彼女に見破られたら君の負け。」 「見破られなければ勝ち、ということですね。」 「そういうこと。因みにサファイアは動体視力が優れているから、ちょっとやそっとじゃ誤魔化せないから注意してね。」 何時もの薄い笑みを浮かべながら、何処か楽しそうな感じがするのは気のせいなのか。 ――しかも地味にアタシにまでプレッシャーばかけとるとよね…―― こうなると無駄なあがきは止めて、大人しくやらざるを得ないだろう。 コイントスならばマジックのタネを見破るよりは簡単だ。 緊張した面持ちでライムは少女へと向き直り、利き手の方で軽くコインを羽上げる。 「チャンスは三回。徐々に難易度を上げるもよし、最初からタネを仕込んで難しくするもよし。」 要は勝てれば問題ないよ。 さぁ、やってごらんと言う風に促され、両者はギクシャクしながら向き合った。 「よ、よろしくお願いしますったい。」 「…よろしくお願いします。」 数回軽くコインを弾いたあとだった。 強く弾かれたコインがライムの頭上を越えて、そしてゆっくりと落ちる。 左右の手を数度交差させるようにして、掴む音と共に両拳が目の前に差し出されていた。 ほんの一瞬の事で、普通の人ならば恐らく見過ごしていただろう。 「…さぁ、コインはどっち?」 「……左ったい。」 ゆっくりと左の掌が天を仰ぎ、そしてそこには銀色の輝きがあった。 サファイアはホッと胸を撫で下ろす。 ライムはこれくらいでは駄目か、と次の方法を模索しているようだ。 再びコインを軽く羽上げながら、想像練習 「…二回目、いきます。」 先程と同様に頭上まで羽上げ、今度は視覚に残像を残すように逆にゆっくりとした速度で手を交差させて掴んだ。 両拳を差し出された時には既に残像が消え失せており、文字通り"あっという間"である。 サファイアも追うのに疲れたのか、はたまた分からなかったのか、手の動きが止まったと同時に目を何度も瞬かせた。 「…さぁ、今度はどっち?」 「……また、左ったい。」 返された掌には、また銀色の輝きがあった。 これには少し驚いたのか、ライムはこくんと喉を鳴らす。 少し思案した後、再びコインを指で弾きながら軽く羽上げる。 今度は両手を使って、羽上げたコインを右から左、左から右へと何度も行き交わせる。 数回繰り返された、その時だ。 一際高く羽上げられたコインが目の前に落ちてくる。 と思った瞬間だった。 先程より早く縦横無尽に両手が交錯され、目の前で何度もコインが左右の手を行き交う。 両手が不規則に動き、手の位置もコインの位置も即座に変わっていく為、常人の目では追い付かない。 そしてその動きは唐突に終わり、既に眼前には握られた拳が付き出されていた。 「……さぁ、どっち?」 「……。」 普通の人間なら目で追うことは難しく、恐らく当てずっぽうになるに違いない。 今度ばかりは当てずっぽうでは見抜く事は出来ないはず。 緊張感が走る中、少女は重そうに口を開いた。 「……どっちでも、なか。」 「えっ?」 「だって、どっちの手にもコインは入ってないったい。」 コインは今そこにあるとよ。 そう言ってサファイアは右腕の袖を指差した。 丁度肘の辺り、拳を握ったまま手を下に下ろさなければ落ちることはない。 ライムは重々しい表情をしつつも、一呼吸置くと左右の拳をゆっくりと開いた。 確かにどちらにもコインはない。 その後右手をスッと下に下ろすと、袖を伝って先程消え失せたコインが手の中に落ちてきたのだ。 「…よくやったよライム。君は上手く出来ていたよ。サファイアがこれほど動体視力が良いとはね。」 「あっ、アンタが余計なプレッシャーばかけよるち!やから必死で目で追ったとに!」 「別に怒ってないだろ?誉めてるんだからそんな躍起にならないの。」 ルビーですら見破られるのは予想外だったようだ。 諭されるように宥められ、そうならばあんな言い方しないで欲しかったのにとサファイアは眉間に皺を寄せて無言の抗議をする。 一方で誉められたものの、主以外に――しかもまだ見習い同然の補佐者 「まぁそう落ち込むなよ!今回は相手が悪かったんだって。気にするなよ!」 背後から聞き覚えのある甲高い声が聞こえ、少女は弾かれたように振り向いた。 視界に飛び込んできたのは、輝く金髪と額に鎮座している翠色の宝石。 「エメラルドさん!ラティアスさん!」 「よっ、サファイア。久しぶり!元気だったか?」 「こんにちは、サファイアさん。」 「来たねラルド。」 「お前も久しぶりだな、ルビー。」 好戦的な視線が交わされ、亜麻色の少女は一瞬戸惑いを覚える。 この数ヶ月で分かった事だが、己の事を好意的に受け止めてくれている選手 それどころか、このようにライバル心剥き出しで相対する事もある位だ。 ルビー自身も幾ばくか気を許しているようで、彼らと対するときは割りとリラックスしているように思う。 だがそれは互いが譲らない事を示し、つまり何が起こるか全く分からないという事でもある。 しかも常人水準 どんな事が起こるか分かったもんじゃない。 「最後は君の番だね。準備は万端かい?」 「当ったり前だろ?ビックリして腰抜かすんじゃねえぜ?」 「ほぅ、じゃあお手並み拝見といこうか。」 そう言うとルビーは上着代わりに着ていた半袖のYシャツを脱ぎ捨て、先程までほぼ使っていなかった戦闘領域 今日は身体を動かす事はないと思っていただけに少女は豆鉄砲を食らったかのように驚愕する。 「ちょっ、何ばしょっとね!?」 「ラルドはギミックバトルが一番得意だからね。奇術 「あっ、ちなみにコレやってるの俺だけだからな。」 「そんな事は分かっとるったい!」 思わず声を張り上げて突っ込みを入れてしまったのも束の間、既に両者は戦闘領域 雰囲気から察する通り、正に一触即発。 急展開に少女は付いていけない。 「うえっ!?ちょっ、二人ともいきなりおっ始めるとね?!!」 「制限時間は五分間。その間にお得意のギミックで僕に触れることが出来たらSランク。 触れられなければA以下のランクから、総合的判断を下す。」 「オーケー。何時でも良いぜ?」 「という訳で、審判は任せたよサファイア。Ready...Go!!!」 掛け声が掛かると共に、エメラルドの長い袖口から銃のようなものが飛び出し、弾を放った。 土で出来ているようで、弾がぶつかった壁や床に茶色い波紋 を広げている。 言葉を上げる余裕もなく、事の成り行きを見定める役目を負わされた亜麻色の髪の少女はそのまま審判役として務めを果たさざるを得なかった。 その様子を後ろからずっと見詰めていたラティアスは、緩やかに微笑んでいた。 ――ラルドったら楽しそう。ルビー様も去年より生き生きしてらっしゃるわ。―― そして何でもかんでも自分でした方が早いのだろう。 今までであれば他人に何かを任せる事など、特に合否に関わる審判を下させる事などしなかった彼が、この少女には少しずつだが委ねはじめている。 勿論育てる名目でさせているだけかもしれないが、それでも自分達が此処に来てからは無かった光景であることは間違いない。 きっと何かが変わり始めているに違いない。 ラティアスは未だ見ぬ未来に想いを馳せながら、そっと瞳を閉じるのだった。 「…おい、ルビー。」 「何だい?ラルド。」 戦闘 後に続いて行こうとした矢先に声を掛けられた。 振り向いてみると真剣な眼差しをこちらに向けてくる翠の瞳があった。 「お前……何時までそう澄ましてるつもりだ?」 「…何のことかな?」 「とぼけんじゃねぇよ、他の奴らはともかく俺の目は誤魔化されねーぞ!」 お前も知ってるだろ?俺にはその人の心裡が手に取るように分かるって事が。 そう言い詰められるが、ルビーは知ってるよと素っ気無く返すだけだった。 その態度に苛立ちを覚え、思わず胸元へと手を伸ばす。 「毎度毎度この時期のお前は……どうして自分を大事にしねぇんだよ。」 「愚問だね。僕は自分に与えられた役目をこなしているだけさ。そこに僕自身の意思なんて端から無いのに。」 「…っ!だからって!!」 「止めようラルド。今更何を言ったって結果は変わらないんだから。」 安心しなよ、君ら そう言って胸元の手を払い、後ろ手にひらひらと手を揺らして去っていった。 足取りは寧ろ軽やかに見える。 それだけに尚更悔しさと怒りが込み上げていく。 「ったく、"限界"って言葉知らねぇ奴なんだから。……アイツ、本当にこのままじゃ長生き出来ねぇぜ。」 人間は己の命を守る為、必ず"限界点"というものを己に設定している。 だから人間は本来持ちうる力の20%ほどしか発揮出来ないように出来ているのだ。 必要以上の力が掛かれば、己の身を傷つけ兼ねない。 しかしルビーは、普通は自分の意思で弄る事の出来ないその"限界点"を、己が意思で制御 常人では考えられない能力だが、それだけに後の反動というのは計り知れない。 "天賦の才を持つ"からこそ、それが仇となっているのに…。 後姿を見送りながら、結局自分には何もしてやれないのかとエメラルドは苦虫を噛み潰したように項垂れていた。 僕ハ強イ。僕ハ賢イ。僕ハ天才デ何デモ出来ル、正シク存在ソノモノガ至高ノ一品。 ケドソレハ決シテ僕ガ望ンデイタコトデハ無インダ… back next close
三番手は忘れちゃダメだよ!なラルドですww彼は一年の大半は館に居ない設定な為に次回あるのか未定^q^
今回はPCでの編集途中で思いっきり付け足しました、なのでまさかの15KBに\(^o^)/ 何を付け足したのかは察してやってください(苦笑)とりあえず裏でカウントダウンが始まってます、色々ww ラルドの能力は本誌でやってた生息地分かるぜ的なアレを、その人の心の裏を表情や息遣い、仕草などで読むっていう感じに変えてます。 なので群集の心を鷲掴みにするパフォーマンスが得意だよっていう所に繋げているつもり(苦笑) さぁ、四人目は誰かな!!ってもう自分の中では決まってるけど(笑) |