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レインは自分の事を分かりやすく、尚且つ完結に説明した。
その場にはカト・マクイル、ルホ・セルリア――この二人は同い年で、セナより二つ年上にあたる――、 キリア・ユキシマルにサオ・フレマンという七歳の少年、 そしてジラン・シーリアという十歳の少年――茶交じりの黒髪を持つ、 南大陸の出身である父とルークラト出身の母の間から生まれた 所謂混血児で、肌は茶褐色より若干白いといった所だろうか――の計五人と、当の本人である少年 レインとその事情を知る少女セナがいた。 平和すぎるこの町には事件といえる物が乏しい。 その為、この辺りに住まう子供達は日々刺激を求めているようだ。 誰もが少年の話にしっかりと耳を傾けている。 その様子を見て黒髪の少女は不安を抱いていた。 彼が一族の者だと知って連れて行こうとしている奴らがいる、というのは紛れも無い事実。 それなのにこんな簡単に友達とはいえ彼らに――といっても此処に連れてきたのは自分なのだけれど ――話してしまって良いのだろうか。 「…はぁ〜そんではるばるこのルークラトまで来たって訳かい。」 カトが酷く感心した様子で言った。 「そいやぁ最近妙な二人組が町中をうろついちょるって聞いたで。」 「あっ…アタシもそれ聞いた。」 ルホがその後に続けた。 その言葉はレインの表情を曇らせた。 「そうか。…多分それが俺を追いかけてきた奴らだよ。」 眉間に皺を寄せ、重苦しい声で答える。 端整で綺麗な顔立ちをしているはずなのにそれだけで全体が歪んでしまったように見える。 「…ねぇ。その人たち、悪い人?」 サオが不安そうに尋ねた。 「分からない。」 黒髪の少年は目を伏せる。 「少なくとも、俺の存在を必要としている事は確かだよ。何らかの理由でね。」 その表情はやはり悲しみを帯びていた。 その場にいた少年達は目の前にいる少年を見つめた。 重い運命を背負った、自分たちとそう変わらない灰瞳の異邦人。 それがどれだけ苦しくて辛い事なのだろうか。 「妹探しか…お前 カトが何やら親父臭い口調で続けるが、それは気にしないでおこう。 五人の中でやたら落ち着き払った態度を示す彼はやはり主将 「カト、あなたの家って仕入れとかでハイクラトには行かないの?」 セナはふと思い出して彼に尋ねた。 彼の家は雑貨や家具を扱っていて、時には生鮮食料品の仕入れ業も請け負っている。 隣接している町に対してかなり精通しているはずなのだ。 「確かにハイクラトにはちょくちょく行くけんど、そないな女の子がいるかなんて探さな分からんじゃけぇ。」 溜息だけが辺りに漏れていく。 「そこに妹さんがいる可能性は?」 「さあなぁ…まぁ少なくともあの村にゃでっかい水源があるし、此処よりは物流もえぇし。他所者 何はともあれそこに辿り着かなければ先には進まないようだ。 「でもさぁ、そん地図の場所がハイクラトかは分からんのやなかったか?」 ルホが疑問を投げかけてくる。 確かにあの地図は古すぎて、その位置を断定する事は出来なかった。 だからこそシュウに依頼したのだ。 「まぁ、そりゃあシュウに任しときゃあええだろうが。心配いらんで。」 「そうね。そろそろシュウ君も戻ってくると思うし。」 茶の少年と黒の少女が示し合わせたように互いに頷く。 その時だった。 「くる…」 「…えっ?」 突然キリアが言葉を発した。 何事かと思い、皆がそちらの方に視線を送る。 「黒い人…黒い人がくる。」 隣にいたサオも口を開いた。 心なしか微かに震えているようにも見える。 「来るって…何がじゃい?」 カトが二人の側までやってきて優しく尋ねる。 一見きついように思う口調だが、その声色は安心させるものだ。 「黒い…怖い人。」 サオはまた同じような事を口にする。 黒い人とは一体何なのか。 「あれだ。」 今まで一言も言わなかったジランが口を挟んだ。 その指差した先、町の外れの出入り口になっている辺りだった。 二つの黒い影。 米粒ほどの大きさだったが、それが大人の、しかも男のものだということがこの場にいた者には分かった。 ――ただ一人都会っ子であるレインだけは人であるのかも判別出来なかったのだが―― 「あれは…」 間違いなくこの村の者ではない。 一人は茶交じりの――恐らく金髪――、もう一つは――藍みを帯びている――黒の髪をしているようだが、 顔の造りまでは分からない。 ただその身に纏う衣服は異様に黒く見え、この辺りのものではないことは確かだ。 何だか妖しい雰囲気を漂わせている。 「誰だろう…一体。」 セナには何処かで見たような覚えもある気がしていたが、その二人が何なのか良く分からなかった。 ただ先程から胸騒ぎのような物を感じていた。 「暗い色の…服。もしかしてお前 「えっ…?」 少年の顔に驚きの色が現れた。 二日も姿を眩ませていたというのに、まだこの町に潜んでいたというのか。 「ほれあそこや。アンタしか知っちょらんのや。よぅ見てみぃさ。」 ルホが黒の少年をぐいと引き寄せ、見晴らしの良い所に立たせた。 「…よく見えない。此処からじゃ分からないよ。」 普段からこのようなだだっ広い所で暮らしている彼らと違って、 都会育ちの彼には遥か彼方の人影を見極める事は出来なかった。 「僕、昨日奴らを見た。」 ジランが済んだ声で言った。 「うちの店に来たんだ。言ってたよ。黒髪の灰色の瞳を持った少年を見なかったかって…」 その一言がその場を凍りつかせた。 レインを狙ってきた奴らが、此方に向かってきている。 「どうするんじゃい、セナ。」 茶の少年は急かすように投げかける。 「どうしよう…このまま道を下っていくわけにもいかないし…」 「町の外に向かっていっても、見晴らしが良すぎて返って見つかりやすいしね。」 常に冷静なセナとジランに白羽の矢が立つ。 二人で、何かいい考えがないかと思考を巡らせる。 「こん木の上ってのはどうやろか?」 ルホは思いついたように側に立っている大きく育った若木を指差す。 ジランはすかさず言葉を挟む。 「駄目だよ。この丘の縁 登っている所が見つかってしまう。 万一見つからなかったとしても木の上は行き止まり。逃げ道を自ら断つようなものだ。」 それにこの木は姿を完全に隠すには葉が少なすぎるからその選択肢は使えないよ。 十歳とは思えないほどキツイ、それも凄く的を得た的確な返答に茶の少女はたじろいだ。 だが何時までもこうして話し合っている場合ではないのだ。 誰も彼もが焦り始めた、その時だった。 小さな少女がポツリとある言葉を口にした。 「川…」 「えっ?」 「町に川が流れてる…」 小さな少女の言葉が意味する物とは一体何なのか…その場にいた者は考えるのだが… 「あっ…そうか。」 セナがふと思い立つ。 「何じゃい、セナ。」 カトが何事かと尋ねるが、その言葉はその場にいた他の者全ての疑問でもあった。 「水路よ、水路の事よ。」 「水路?」 カトとルホ、そしてレインが首を傾げた。 サオはきょとんとした顔で見つめている。 「そうか、そういうことか。」 ジランが理解したような口調で言った。 互いの考えが一致した事を黒の少女と目で確認する。 「何じゃい二人して。分かったんやったら早ぅ教えんかい!!」 「川に沿って町の方へ行けば、町中を流れる水路に辿り着く。 それを使えば奴らに気付かれずに町に戻れるのよ。」 幸い、町に流れ込んでいるハイア川は丘の下腹に沿って迂回した形で流れている。 上手く行けば気付かれずにやり過ごす事が出来る、万一見つかっても入り乱れた水路に逃げ込めば此方のものだ。 「ルホ、あなた地下の水路に詳しいわよね。レインを私の小屋まで連れて行ってあげて。 ここは私達で何とかするから。」 「あいよ、任しときぃな。さっ、こっちやで。」 ルホはレインを連れて丘を町に対して反対側に下り始めた。 途中心配そうに此方に振り返った彼に向かって、黒の少女はにっこりと笑いVサインを作った。 その柔らかさとは裏腹に、少女には固い決心があった。 決してあの少年を奴らの手には渡さないと。 二人の姿を見送ると、セナは此方にやって来る二人のほうに向き直り拳を握った。 少しでもここで時間稼ぎを。 「大丈夫じゃい、セナ。」 カトが少女の背中を強く叩いた。 振り返って先には自信に満ちた少年の顔があった。 「オレらがついとる。心配せんでええ。」 「…うん。」 彼が微笑むだけで、心から安心できる。 それだけ、此処にいる者にとってその存在は大きかった。 彼は逃げきれただろうか…いや、自分の信頼している友がついているのだ、大丈夫。 互いに強く結びついた絆が、今の彼らを支えていた。 運命の時は、刻々と近づいていた。 コレガ最後ニナルナンテ 私ハ想像スラシテイナカッタ… back close next
会話が多くなったせいで縦長になってしまってますね。
そのせいではないと思いますが、漢字間違い、台詞や言い回しの修正で何故か時間が掛かってしまいました(汗) もう8月になっちゃいましたね…まだ宿題半分終わってないんじゃないかなぁ…? 小説はもう半分は過ぎてるはずですが… |