のどかで平和な町だった。
道路は程よく整備され、それでいて民家や公園などのいたるところに緑が植えられている。
いつも穏やかで事故や事件も少ない、人々が安心して暮らしている町であった。
そんなある日。
薄く雲がかかっているがそよ風が吹いて気持ちのいい初夏の空に一つの姿があった。
その影は人の
形をしていた。
常人の理屈ではありえない。
だが、その影は確かにそこに存在した。
漆黒の衣服を纏い、空に浮かぶ存在。
その背には、この世に存在するはずのない漆黒の大きな翼があった。
見た目は十代半ばの、恐らく少年。
肌は白く生の感じが薄い。
そして見開かれているその瞳は、紅。
太陽の光がなくとも、それは鮮やかに輝きを放っていた。
彼が純白の衣装を纏っていたのなら、誰もがその姿を見てこう答えるだろう。
天使。
だがその姿は全くの正反対。
混じりけのない深い黒。
肌の白さが更にそれを引き立てている。
そしてその恐ろしいほど鮮明な瞳が、神の使いと対立的な存在の名前を思い浮かばせる。
それは…
悪魔。
人間に罪を犯させる誘惑者の総称。
神話で伝えられているような恐ろしい姿ではなく、むしろ端麗な面持ちだが、
彼を表す言葉があるとしたら恐らくそれしか存在しないだろう。
彼は中空に留まり、下界を広く見渡す。
これから自分が活動の拠点とするかもしれない場所。
治安が良いため、空気だけじゃなく土地そのものが清らかである。
聖地までとはいかないが、この辺り一体は悪魔の目から見れば綺麗過ぎるくらいだ。
そこに彼のような魔がやってきたということは…
「へぇ…なかなかいいじゃないか、この町…」
少し声高な、だが低い響きのある声。
少年は薄く笑みを浮かべて目を細めた。
そして漆黒の翼を大きく広げ、高く羽ばたいていく。
しかし羽音は全くしない。
ただその場に留まっていた空気が動めいただけだった。
風を掴んだ翼は地と水平になり、少年はそのまま空のかなたへと消えていった。
彼の目的は、自分の力を更に強くすること。
その為には新たな力を手に入れなければならない。
異界の者がこの世界にやってきたことを知る者は、誰一人として存在しなかった。
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ルビ悪魔もののルサをオエビ漫画(+SS)でお送りしました
…この調子だと全部完成するのって物凄く先になる気がする…
計算すると、これが完成するのは少なくとも2年後になってしまう(汗)