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広大な紺碧の海を一望出来る、ホウエンの最端に位置する場所。
周りには空海以外のものは何もなく、 遠く見下ろすような位置には巨大な望遠鏡を有する天体施設を所有する孤島の町がある。 その隣りには、洞窟を所有する大きな岩盤状の無人島がある。 そう、此所はこの地方にある有数のどの街にも属さない孤立した街、サイユウシティ。 年に一度、兵共が集い己の強さを競い合う催 ホウエンの十月というのはまだまだ暑さを感じる季節で、 下旬になるまでは秋らしさをなかなか感じられない。 それゆえ、崖上の広場に立つと海風が心地よい。 その場所に亜麻色の髪を靡かせながら、一人の少女が大きく深呼吸をして身体を伸ばしていた。 いよいよベスト4まで勝ち進んで、もうまもなく準決勝も始まるという所だ。 最後の気合いを入れ、少女は奮い立つ。 「まさかアタシがここまで来れるば思ってなかったとやけど。ここまでくれば、最後の最後まで最善 皆、アタシに最後まで力ば貸して欲しかね。 頼むったいよ。 藍の眼で己の仲間達をしっかり見つめ、絆を確かめ合う。 目指すは、あの極みのみ。 「今ったい!ちゃも、ブレイズキック!!」 「ギャァァアアアア!!」 「エアームド!!」 『バシャーモのブレイズキックが決まったー!!エアームド、戦闘不能です!!よって勝者はサファイア選手に決定致しましたー!!』 甲高い鐘 自身の勝利を宣告され、少女は更に高揚感を覚えた。 『いよいよ、次が決勝戦ったい。』 憧れたあの場所への挑戦権と共に、いよいよリーグ優勝が目前へと見えてきた。 今まで戦ってきた手持 「ここまで来れたんも皆のお陰ったい。次が最終戦 勝負を終えたサファイアは、ポケモン達の回復を済ませる為に控え室に向かう。 その時だ、次の試合の開始を呼び掛ける放送が、廊下に備え付けてある拡声器 『まもなく、準決勝戦第二試合が開始されます。出場者の方は、受け付けへお急ぎの上、控え室までお越し下さい。』 もう第二試合が始まるのか。 そんなことを思いながら歩いていた少女は、ふとあることに気付く。 準決勝第二試合。 つまりこの勝者が次の決勝に勝ち進んでくるということで、自分と最後戦う相手になるという事だ。 リーグ戦はABCDの四つのブロック毎に分かれて対戦し、各ブロックを勝ち抜いてきた四人で準決勝が行われる。 各ブロック毎に別会場で試合を行う為、準決勝で相手と初顔合わせとなるのだ。 つまり、次に戦う二人のどちらも未だ顔を合わせたことのない未知の存在。 ならば、この試合を見過ごすなんてどうして出来ようか。 「敵のことば知らずに攻め入るなんて、始めから負けに行くようなものとね。」 せめて対戦相手の顔を拝まなくてはいけないだろう。 試合が始まるまでに手持ちの回復を済ませようと、少女は長い髪をたなびかせながら駆け出して行った。 大急ぎで会場に向かったものの、既にそこは喜々とした歓声で溢れ返っていた。 試合はもう始まってしまったのだろうか。 騒ぐ気持ちを必死に押さえながら、光の落ちた廊下を一気に駆け抜けていく。 眩しく輝く光に飛び込んだ瞬間、視界が眩い白光で閉ざされる。 心なしか歓声も一際大きくなった気がした。 次第に順応していく瞳が最初に捕らえたのは、手前にいる少年とその手持ちであった。 短いモスグリーンの髪に茶系の長袖とベストを合わせた少年の姿は正に戦い慣れしていると言える。 そして、いかにも強そうという風に鍛えあげられたゴルダックが、 雨乞いで威力を上げた水の波動を次から次へと繰り出していた。 それに応戦しているポケモンはかなり素早く、一見すると黒い残像しか見えない。 だが、動体視力の優れている少女にはそれが何か分かっていた。 灰色の体毛に艶やかな漆黒の毛並みが映えた、すらりとした体躯が宙を舞っている。 「かなり素早いグラエナとね、あっちもよく鍛えあげられてるったい。」 そうやって双方を見やっていた矢先に、ふと違和感を覚える。 軽やかな歩調 しかし蒼い獣 だが、少女が記憶の糸を手繰り寄せるよりも早く事が判明する結果となる。 ゴルダックが水技の大技を繰り出そうとしたその瞬間だ。 「交わせNANA!そのまま捨て身タックル!!」 ハイドロポンプが発される一瞬の隙を見極め、寸前のところで交わした獣 そしてその勢いのまま相手に飛び掛かっていった。 その強力なタックルを食らったゴルダックは、どうにか踏ん張ろうとしたものの、そのまま地に平伏した。 「ゴルダック戦闘不能、グラエナの勝ち!」 審判の掛声の後、大きな歓声が巻き起こる。 その声援を受けたグラエナは誇らしげに胸を張って一声吠えた。 己も反動で衝撃 一撃必殺ともいえる素晴らしい攻撃を目の当たりにし、少女は目から鱗が零れたかのように唖然としてしまう。 "あの時"と同じだ、一撃で相手の急所を捕らえ、確実にそこを射止めていたのだ。 「ハイドロポンプは確かに威力の強い技だけど、そのリスクとして命中率が悪い。 残念だったね、僅かにだけどボクの方が運が良かったみたいだ。まぁ、運も実力のうちだけどね。」 雨が止み、徐々に水煙が晴れていく戦闘場 何処かで予想はしていたのかもしれない、 だが驚愕の余りに少女は魚のように口をパクパクさせるしか術を持てなかった。 「な…っ、なしてルビー あれよあれよと言う間に勝負は決した。 白い帽子を被った少年は大歓声の中華麗なアピールをしながら会場を去って行く。 サファイアは放心した自身を自ら奮い立たせ、慌ててその後を追う。 選手が控え室に行く為に必ず通ることになる通路へと先回りをする為に。 十字路になっている通路に滑り込むように走り込む。 会場側と控え室側の双方に目を配り、そして見つけた。 控え室へと向かって行くあの背中を。 「ルビー!!!!」 咄嗟に何と言えば良いか分からず、少女は相手の名前を叫んだ。 一瞬の間を置いて少年は声のする方を振り返る。 視界に捕らえた見知った姿に、特に驚く素振りも見せずに笑顔で答える。 「なんだ、サファイアか。久しぶりだね。」 「なんだ、久しぶり、じゃなかとね!!なしてアンタが此所におると!!?」 ホウエンの大災害から三年後、土地の被害状況の調査や復興作業も一段落し、 元の有様をようやく取り戻した南の大地。 全てがようやく落ち着き、自分の夢に向かって邁進出来る時が来た。 少年とは二年前に父親の依頼を受け、バトルタワーで功績を成し遂げてからはめっきり会っていなかった。 てっきりまたコンテストにうつつを抜かしていると思っていたのに。 「なんでって…リーグ戦を勝ち抜いてきたからに決まってるでしょ?」 「っ、だからそういうことば聞いてるんじゃなかと!!コンテストはどぎゃんしたね!!」 「あはは、勿論制覇してきたさ。ほら、これシンオウ大会で取ったリボン、なかなかゴージャスでエレガントだろ?」 あの後遥か遠くの地、北のシンオウまで足を伸ばしたらしい。 確かあちらの方では更に格 ホウエンのコンテストを僅か80日で制覇してしまった彼の事だ、獲得に1年も費やしてはいないだろう。 「…っ、じゃあなして今此所におると!?此所はポケモンリーグ、バトルの頂点を極めるとこったい!」 「知ってるよ。優勝者は歴代のリーグ優勝者と共に表彰され、記録に残される。れっきとした伝統ある大会だってね。」 「だったら尚更、なしてリーグに参加ばしとっと!そりゃあアンタの強さなら予選ば勝ち進んでくるなんて朝飯前かもしれんち。 けど、それとこれとは話が別ったい!」 相応の実力を持っている事と、それだれの振る舞いをすることは違う。 バトルの才を持ちながらコンテストをやっていた彼なんて典型的だ。 各々の事件を経て、最近はバトルに対する抵抗は無くなっていたように見えたが、 とてもじゃないがリーグに参加し優勝を狙うようには見えなかった。 何故、どうして?様々沸き上がる疑問を少女は一心にぶつけた。 その意を汲み取ったのか、少年はその藍の瞳を見つめながらしばし口を閉ざす。 そして目を閉じて微かにだがふっと笑った。 「…約束、したからね。」 「………えっ?」 今この少年は何と言ったのだろう。 約束、と口にしなかったか。 唖然とした少女を余所に、ルビーは再びその視線を向ける。 「じゃあ僕行くから。決勝でね。」 「…へっ、あっちょっ、ルビー!!?」 少女の呼び掛けには応えず、ニッコリと満面の笑みを称えながらそのまま踵を返してその場を後にしていく。 その成長した後ろ姿を見送りながら、あの日のことを思う。 自分がこの地を目指す発端 『知ってるかい? 父さんがいってたんだけど、カントーってところにすごいトレーナーがいて、その人は11歳でポケモンリーグを勝ち抜いたんだってさ。 だったらボクらは"11歳になる前に"同じくらい強くなろうよ。そしたら…へへ…その人よりスゴイってことになるよね!』 決勝戦の結末がどうなったのか。 それはまた別のお話。 fin. close
「約束」と聞いて思いついたのが、ルサの幼き日の出会いのこの言葉だったんです
完結までにすごく時間がかかった記憶があります、セリフを提供下さった某様には感謝申し上げます(><) ちなみに作中で登場してきたゴルダック使うトレーナーは実は僕のことだったりします(笑) 僕の(ダイパの)外見はエリートトレーナーなので、一応それを真似て描写したのですが(^^;) |