change 6

「「ボク(あたし)の身体で何してるんだー!!!(何しとるとねー!!)」」

そういって飛び込んできた"二匹"の勢いは凄まじく、受身の体勢さえ取れなかった"二人"はなだれ込む様に倒れた。
砂煙が立ち上った後に残っていたのは、生き死体と化した二人と二匹の肉体が積み上げられた様であった。
少年と少女の身体の上には蒼と橙の姿が横たえられている。
折り重なるように地に伏した彼らが目を覚ましたのは、その数分後であった。


change-6

「………ん…?」

いち早く目を覚ましたのは少年の方だった。
少女の方もそれと寸分違わないくらいの差で眼を覚ましたのだが、その僅かな差が後の悲劇を生む。
視界の定まらない中、朦朧としている意識をはっきりさせようとする。
そして、一体自分に何が起こったのかを改めて思い起こそうとした。

「……そうだ、ZUZUの身体でボクに体当たりしたんだっけ?…でも何で?」

頭よりも先に身体が動いてしまった為、何故そのようなことをしたのかがそこでぽっかりと抜けてしまっている事に気づいた。
とりあえず身体を起こそうと腕に力を込めようと下を見下ろした時だった。
己の掌は地には着いておらず、代わりに少女の細い肩と腰元に添えられていた。
降ろした視線の先には、驚愕した顔で赤面しながら硬直している少女の姿があった。
視線がかち合った瞬間、自分達が上下に折り重なっていて、そして少年が少女を抱えるような体勢になっていた事実を悟る。
見に覚えのない事とはいえ、あまりの事実に衝撃が走る。
つかの間の放心の後、互いに飛び跳ねるように離れて一定の距離を置いて背を向けた。
言葉を発することも忘れて、こみ上げてくる熱に激しく戸惑うばかりであった。

『おっ…男の人に抱きしめられてしもうた…///』

少女は赤面する顔を覆うように両手で押さえ、高鳴っている自身の鼓動の音を聞くまいと強く耳を塞ぐ。
見開かれた目は戸惑いの色を帯びて感情の波に震えている。
自身に押し寄せてくるソレが何なのか分からないまま、乱れた呼吸を必死に整えようとする。

『しかも、よりによってあいつに…っ!』

こみ上げてくる感情は戸惑いなのか、それとも怒りか。
正体を突き止めることが出来ずに、ただ渦巻く思考ばかりが締め付けていく。
この気持ちは一体何なのか。
浮かんできた疑問の答えも分からず、藍い瞳の少女は背後で動く気配のない少年の方をゆっくりと振り返った。

『おっ…女の子を抱きしめてしまった…///』

少年は赤面する顔を隠すように片腕を翳し、自身を落ち着かせようと手の甲を口許に当てる。
力のこもった目は戸惑いの色を帯びて一層その輝きを強めている。
今自分の身体に何が起こっておるのか分からないまま、波打つ心臓に手を当てる。

『しかも、よりによってあの子を…っ!』

湧き上がってくる感情は驚きなのか、それとも後悔か。
訳が分からずただ思考だけが周り、自身を強く締め付けていく。
この気持ちは一体何なのか。
問いかけても返ってくる答えのないまま、紅い瞳の少年は背後で動く気配のない少女の方をゆっくり振り返った。


お互い目線を合わせても何の言葉も出ない。
既に思考は明後日の方向に飛んでしまい、何をしたらいいのか見当がつかない。
二人とも通常の精神状態を失ってしまっているのだ。
無碍にその目を逸らす訳にもいかず、しかし思い余って言葉が出てこない。

「…あっ……そっ、その…これは……」
「…っ////」

事故だといえば事故であるし、故意的であるといえば故意的には違いないだろう。
自分達の身体を支配していた魂はつい先程まで別の物であって。
"彼"が"彼女"を守ろうと咄嗟に覆いかぶさっただけであって。
当の本人達が望んでいた結果ではない事が次々と重なって起こってしまっただけのことだ。
だからこそ、素直に怒る事も出来なけば感謝することも出来ない。
どうすればいいか分からずそのまま俯いてしまった二人を余所に、ようやく相棒(パートナー)達が目を覚ました。

「…ズッ、ズゥ?」
「…ちゃもぉ?」
「あっ、ZUZU!大丈夫かい?!」
「ちゃも、しっかりするったいよ!」

この状況を打開するきっかけを運んでくれた二匹にすぐさま意識を傾ける。
特に怪我をしている訳でもないような姿を見て、二人は安堵の息を漏らした。
だが、事態はやはり思うように運んではくれなかった。
二匹のある意味異様な光景を目の当たりにしてしまったのである。

「「…えっ?」」

互いに目を見開いて、少年と少女はまじまじとそのしぐさを観察する。
何故か直立二足歩行でぴょんぴょん跳ねるように両腕を伸ばしている蒼い獣と、 短い羽になっている腕を地に着き不恰好な体勢で四足歩行をしている橙色の獣。
本来の彼らの行動とは思えないその姿に、双方冷や汗を垂らす。
まさかという思いが、頭の中を過ぎる。

「…ZUZU?」
「ちゃも…?」

恐る恐る相棒(パートナー)の名前を呼び、確認を取る。
双方振り返った方角は、説明するのも無意味だろう。
円らな瞳がこちらを見ているのに見向きもせず、少年少女は絶叫する。

「「どっどうなってるんだよ(どっどうなってるったい)〜〜〜〜〜!!!!!!」」




fin...?




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すっげー投げやりな展開ですが、これにてchangeの連載は終了です!(えぇぇぇ)
だってこの話、元々ギャグで突っ走って終わるつもりだったんですもん(苦笑)
(こんな風に終わるとは微塵も思ってなかったですけどね!)
作者自身微妙に腑に落ちない部分ありますが、これはこれですっきりとした終わり方だとは思ってます