2.お昼休み

「……おい、オイラがさっき何て言ったかちゃんと聞いてたのか?」
「聞いてたよ?だから何?」
「…だったら何でオメェが此処に居るんよ。」
「葉のお弁当にありつくため。」
「…オメェなぁ……ウザイってよく言われねぇか?」
「そんなちっちぇえ奴らの言う事なんて、この僕が気にするとでも思ってるの?」
「いんや、これっぽっちも思わねぇ。」

とある日の昼下がり。
外は清々しいほどの五月晴れで、太陽は燦々と降り注ぎ、 雲が溶け込んでしまいそうなほど青く透き通っている空が広がっている。
気温も丁度良く湿度も高くないという、肌には心地いい快適さであり、 運動場では早々に昼飯を終えた生徒達がサッカーだの野球だのではしゃぎ回っている。
此処は言わずと知れた開かずの屋上。
何故開かずと言われているのかといえば、常にその鍵が先生の手にあり、 特に何か理由のない限り終日施錠されている為生徒は立ち入ることが出来ない場所だからだ。
では何故、この二人はそんな場所に出入りをしているのか。
理由は言わずとも分かるであろう。
彼等は普通の高校生などではないからだ。
その事実を知るものは極僅かにしかこの学校には存在しないのだが。


長い髪を頭上で一つに束ねた少年は、開かれた弁当に半ば強引に箸を突っ込む。
そして、目当ての食材を摘み上げると、ひょいと自分の口の中に放り込んでいく。
既に弁当の持ち主である、ヘッドホンをカチューシャのように頭に掛けている少年はもう反論する気も反抗する気も失せていたので、 諦めて自分の食事の方に集中し始めた。

「そういやハオ、オメェどうしてオイラが此処に来てるって分かったんよ?」
「ヤダなぁ〜僕が葉の居場所を見失うわけがないだろ?」
「………。」

実の弟を目の前にしてこうもニタニタと笑って惚気ているこの姿を見て、 この男を好いている女子達は幻滅したりしないのだろうか。
葉は痛みを訴え始めた自分の頭を抱えながら切実に不安を感じた。
――葉は知りえなかったが、弟LOVEなこの兄を応援している女子達も実は少なくないのだ(笑)――

「お前こそ、わざわざオーバーソウル使って鍵開けたりなんかしてさ。何?次の授業サボるつもり?」
「悪いか?だってオイラあの授業好きくねぇんだもんよ。眠いだけで…」
「まぁね。あのメガネの授業は誰だって嫌がるさ。」
「狽っ!オイラの卵焼き!!」
「気にしな〜い気にしない♪」
「十分気にするぞ……」

いい加減この唯我独尊兄をどうにかしてくれないものか。
これで一応成績優秀者なものだから、先生の側から見れば一目置くか危険視するかのどちらかに分けられるし、 生徒の側から見れば尊敬の眼差しか得体の知れない奴かどちらかだ。
どうして普通に過ごせないものか…
いや、この男にそれを言ったところで聞き入れるような玉ではないな。

「葉ってホント料理上手いよね〜一家に一台、お嫁として欲しいよね☆」
「何でオイラが嫁に行かなきゃいけねぇんだよ。しかも一台ってオイラ冷蔵庫と同じ扱いなんか?!」
「心配しなくても大丈夫、ちゃんと面倒見てあげるからさ♪」
「…人の話全然聞いてねぇだろオメェ。」
「ん?何か言った?」
「……もういい。」

真面目に付き合っていたら身が持たない。
昔からそうだったことは分かっていたつもりだが、性分的にどうしても相手にしてしまうのだ。

これがなかったらいい奴なんだけどな…

「…ん?どうしたの葉、僕の顔に何かついてる?」
「…あっ!いや、なっ何でもねぇんよ!!」
「ふ〜ん、まっいいけどさ。」

そういってハオは最後の一口をパクリと口に含み、幸せそうな顔でごちそうさまと両手を合わせた。
今日も結局葉の弁当の半分はハオの胃袋の中へと消えてしまう羽目になった。

「ていうか、弁当いるんだったら初めから言っとけよな。オメェが今日はいらねぇとか言うから作らなかったって言うのに…」
「仕方ないだろ?急に会議がなくなっちゃったんだから。僕だって最初は売店でパンを買って食べるつもりだったさ。」
「だからって、人の弁当食っていい理由にならねぇ。」
「ごめんって。だから帰りにどっか行こうよ。どうせ帰る前に二人でお腹空かしちゃうんだろうしさ。」
「勿論、ハオの驕りだよな?」
「可愛い弟の為なら、お兄ちゃん喜んでお供いたしますよ?」
「その言葉、しっかりと聞いたからな。」

まぁ、ハオが自分の言ったこと曲げるような奴じゃねぇこと分かってるけどさ。

中途半端に流し込んだ為、妙な空腹感と満腹感を訴えるお腹を無視し、葉は身体を宙に投げ出すように横になった。
再び封のされた弁当箱は傍らにちょこんと置き、昼寝の体勢に入る。

「えぇ〜葉ってば寝ちゃうの〜?つまんない〜」
「気持ち悪い声出すなって;;オイラ眠いんだから静かにしてくれ。」
「お前が眠いのはいつもの事だろ?ホント、年中ユルユルなんだから。」
「悪かったな…ていうかオメェそろそろ戻った方がいいんじゃねぇのか?さっき予鈴聞こえたぞ?」
「葉の居ない教室に行ったってつまんないじゃん。僕もサボる。」
「オメェ…それでも生徒会長かよ。」
「大丈夫、勉強については別段何にも困ってないから。」
「…そういう問題じゃねぇって。」

本来なら同じ教室に振り分けられるはずがないあんたら双子が同じクラスに所属してる時点で、兄の権力の強さを知りなさい弟よ。

「…まぁいいけどさ、昼寝の邪魔だけはするなよな。」
「えぇ〜それじゃ僕がつまんないじゃん。」
「誰がオメェの相手するとか言った!嫌なら教室戻れよ、オイラは寝る!」
「…つれないなぁ〜相変わらず。いいよ、僕も一緒に昼寝するから。」

だったら始めからそう言えって。
いっつも何だかんだ文句か我侭しか言わねぇんだから……って。

「何でオイラに引っ付くんだ!!コラ!離れろ!!」
「えぇ〜折角なんだから一緒に寝ようよ〜!昔はこうやって一緒に寝たじゃない。」
「あれは小学校上がる前の話だろ!!今幾つだと思ってんだよ!!ぎゃー!!!何処触ってんだ!!コラ離せ変態!!!」
「お褒めに預かり光栄ですvv」
「誰も褒めてねぇ〜!!!!!」


結局葉が安眠出来ることなく、午後の授業は終わってしまうのだった。



fin.



close
…どうした!!何でニガテなはずのギャグでしか終われないんだ!!(爆)
駄目だ…多分この双子の存在自体がそういうモノになり始めてんだわきっと;;
…多分、多分シリアスに戻る、戻ると思ってるんだけどどうなのよ!!(笑)
でも思ったんだ、この「お昼休み」っていうお題だと学校か会社かどちらかにネタ絞られるよね(苦笑)